スパークリングホラー
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物売り 2018年7月29日


町に定期的に来る移動販売車。噂では、普通の店では手に入れられない『あるもの』を取り扱っているという。噂を聞き付けた彼は真偽を確かめようと、販売車のことを調べ始めるが……。

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 特徴的なアブラゼミとキジバトの鳴き声。まるでアニメのワンシーンかのような晴天。フライパンでも置けば目玉焼きが焼けそうなくらい、熱されたアスファルト。遠くには麦わら帽子を被ってタオルを首に巻いている、タンクトップ姿のおじいさんも見える。
 僕はそんな典型的な夏の中で、近くのスーパーで買ってきた安いスポーツドリンクをちびちびと飲みながら、日陰にあるベンチに座り込んでいた。
「おばちゃん、ジュースちょうだい」
 目の先にある移動販売車に、小学生と思わしき男子の集団が群がっている。そのうちの一人が販売車のカウンターに小銭を置くと、人がよさそうなおばちゃん──お婆さんでもお姉さんでもない、おばちゃんという表現が何よりに合いそうな中年の女性──が、ニコニコしながら男の子達に、栓を抜いた瓶入りのオレンジジュースを何本か手渡した。
「暑いからね、熱中症には気を付けるんだよ」
「ありがと、おばちゃん」
 わいわいと騒ぎながら、男子の集団は移動販売車から離れていく。僕はボケっとしながら、その様子を眺めていた。
 この暑い中、僕はなんと恐ろしく無意味なことをしているのだろうか。そんな考えが頭をよぎる。けれど小学生の頃からオカルトハンターと呼ばれてきた僕の矜持は、この程度の暑さではへこたれそうもなかった。

 『あの訪問販売車では負の感情を売っている』、そんな有り得ない噂がいつから出てきたのかは分からない。というよりは、いつからあの訪問販売車がこの町に来ているのか、ほかにどの町に行っているのか、それすらも分かっていないのだけれど。
 とりあえず、良くある怪談話の例にもれず、この町ではいつの間にかそんな噂が立っていた。これが町の呪いだったり殺された妖怪の恨みだったりするのなら公民館にでも行けば資料があるのだけれど、そういうわけにもいかない類の噂だ。
 一度、ここにずっと住んでいるおじいさん──僕自身は別の町で幼少期を過ごしているため、昔のこの町については何も知らない──に、噂のことを聞いたことがある。でも返ってきたのは、「何時からかはわからないが、確かにそういう噂はある」という返事だった。
 以来、噂のルーツを辿るのは諦めていた。それで、実際に売買している所を押さえた方がいいだろうと考え、今みたいに来るか分からないお客さんを探しているのだった。
 ふと気づくと、若い男の人が訪問販売車の前に立っている。
──もしかして、噂を聞いた人かもしれない。
 たるんでいた気を引き締めた。
 ここら辺では僕含め珍しい、20代前半くらいの男。流行を取り入れた不透明な金髪を、下手なワックスとスプレーで固めている。肌が荒れているのか、指先が黄ばんでいる右手で頻繁に頬を掻いていた。なんとなく大学生っぽい感じがするのは気のせいだろうか。
「おばちゃん、タバコねえかな」
 にこにこしながら、おばちゃんは「有るよ、銘柄はなんだい」と男に尋ねる。男が銘柄をつぶやくと、ほどなくして棚の下からたばこの箱が出てきた。
「これで間違いないかい」
「ああ」
 男がぶっきらぼうに金を出して、たばこをひったくるように取る。すぐさまセロファンを破ってたばこを一本取り出した彼は、ポケットの中から100円ライターを取り出した。そのままたばこに火をつけ、歩きながら紫煙を吐き出して移動販売車から離れていく。
 どうも、僕の求めていたような人とは違うらしい。
──まあ、そんなすぐに見つかるわけもないだろう。
 僕はまた気を張るのを止めて、「こんな姿を彼女に見られたら、間違いなく別れることになるな」なんてことを考えながら、空を眺めていた。

 日が傾いて、オレンジ色の光が周りを満たす時間になった頃。うだるような暑さはそのままに、温度が些か下がったせいで湿気がまとわりつく時間。僕の一番嫌いな時間帯だ。
 見ると、オレンジ色の光に肌を染められた男性が、訪問販売車の前に立っていた。しわだらけのスーツ姿とくすんだビジネスバッグ。会社帰りだろうか。
 そんな男を見ても、おばちゃんはニコニコしながら「ご用件は?」と尋ねる。彼はというと、言いにくそうに唇を舐めたり首を動かしたりしていた。
 ほどなくして、決心したように口が動いて何かをおばちゃんに伝える。声が小さすぎて、ここからでは彼の言葉は聞こえない。けれど、くしゃくしゃになった一万円札を取り出してカウンターに置いたのは見えた。
 あの移動販売車の価格帯は大体把握している。でも、一番高くて五千円くらいする懐中電灯だ。一万円近い商品はない。
「あいよ、分かったよ」
 おばちゃんには彼の声が聞こえていたようで、札をしまうと同時に棚の下に潜り込み、縄を取り出して彼に手渡す。彼はお礼を言うかのように、何度も頷いていた。
「ここから少し歩くと、いい場所があるから。頑張ってね」
 そうして、おばちゃんは小川のある方を指さした。彼は頭を下げながら、販売車の前から歩き去っていく。
 今まで見てきた数名の中では一番不可解な客だ。もしかしたら、彼が『負の感情を買った人』なのかもしれない。
 僕は彼と入れ替わるように、おばちゃんの前に立った。
「すみません、先ほどの男性は何を買われたのですか?」
 おばちゃんは相も変わらずニコニコしながら、「この移動販売車の売りだよ」と僕の質問に答える。でも、僕はそんな回答で満足するような人間じゃない。
「縄がですか?」
「いんや、違うよ。また別のものだよ」
「では、一体何ですか?」
「あんたは若いからねえ……いつか分かるよ」
 煙に巻かれたような気がして、僕は顔を顰める。もう一度聞こうとしたとき、おばちゃんが「さあ店じまいだ」と僕に笑いかけて、シャッターを下げた。
 不意を討たれた僕が固まっていると、トラックのエンジンがかかる音が聞こえ、訪問販売車が動き出した。
 そのまま、おばちゃんと共に、訪問販売車はどこかに去っていく。
 僕は腑に落ちない感覚と一体何を売ったのか分からないもやもやと、そして無為に時間を過ごしてしまった怒りを覚えながら、傾きながらも照り付ける陽光の中を家に向かって歩いていった。

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 次の日、僕が図書館で地元紙を読んでいると、ふとあのサラリーマンの顔が目に入った。尤も、僕が見た時より幾らも血色がよくて、元気そうだったけれど。
「ん?」
 記事を読むと、近くの小川で首を吊った状態のまま見つかったらしい。それで、警察が自殺と事件の両方から調べているそうだ。
「やっぱり……」
 直感的に、事件ではなくて自殺だと分かった。同時に、あの移動販売車が一枚嚙んでいるような気がしたけれど、どうして移動販売車で縄を買っただけの彼が自殺に追い込まれたのかはわからない。
 ともかく、もっと移動販売車について調べなければ。
 そう決意して、僕はいつも移動販売車が止まっている広場に向かうために、熱いアスファルトの上に足を踏み出した。

 広場に行くと、今日も変わらず移動販売車が停まっていた。おばちゃんの姿も変わらない。
 ただ、いつもと違うのは、おばちゃんが若い女性と言い合っているように見える──正確には、若い女性が怒鳴り散らしていておばちゃんはそれを躱している──ことだった。
「どうして売ってくれないの」
 高くてヒステリックな女性の声が、僕の耳に届く。おばちゃんは相変わらず優しい、けれど困ったような声で、「何に使うか分からないからねえ……だから、簡単には売れないのさ」と反論していた。
「さっきから言ってるじゃない。ともかく、あのセクハラ上司をなんとかできればいいの」
 困った表情のまま、おばちゃんは棚の下に潜り込む。ほどなくして、手に何か封筒のようなものをもって立ち上がった。
「本当だね、あんたを信じるけど……覚悟するんだよ」
 女性はおばちゃんの手から、もぎ取るようにしてその封筒を奪いさる。そして、「これでやっと……」とつぶやきながら、お礼も言わずにどこかへ歩き去っていった。
 すかさず僕がおばちゃんの元に走りよると、おばちゃんはまた困ったように「またあんたかい」と、僕をにらんだ。
「いったい何を売ったんですか」
「あんたにはまだ早い……いや、あんたの性格なら、分かるのにそう時間もかからないかもしれないねえ」
「どういうことですか?」
「はいはい、今日は疲れたからこれで店じまいだ」
 僕の目の前で、前と同じようにシャッターが閉まる。僕は「待て」と叫んだけれど、ほどなくしてエンジン音が響き渡り、移動販売車は走り去ってしまった。

 翌日。また情報収集のために新聞を読んでいると、男女二人が同時に会社の窓から落ち、頭を打って即死したという記事が載っていた。目撃者の話では当初二人は口論しているだけだったけれど、徐々にエスカレートして取っ組み合いになり、そのまま近くの窓から落ちたのだそうだ。
 どうも僕には──顔写真は載っていなかったけれど──その二人のうち、女性はあの移動販売車の前で見た人のような気がしてならなかった。名前とともに出ていた年齢と外見も近いし、男性側は女性の上司だったのだそうだ。
 やはり、あの移動販売車に関わって『何か』を買った人たちは、知っている限り全員が亡くなっているようだった。けれど、おばちゃんにそんなことが出来るのだろうか。
 その時、ポケットに入れておいたスマートフォンが震える。見ると、彼女からの『今日会える?』というような趣旨のメッセージだった。
 けれど、そのメッセージを当てた相手は僕じゃなかった。

「あら、いらっしゃい」
 おばちゃんが僕に話しかけてくる。そのトーンは、いつもと違ってお客さんへ向けた声のトーンだった。
 もとよりこうすれば、あの噂の真実が分かることにどうして気づかなかったのだろう。ついでに、浮気したあの女に復讐もできる。一石二鳥じゃないか。
「これで買えるもの、ありますか」
 僕が一万円札を差し出すと、おばちゃんは言外の意味をくみ取ったかのようににやりと笑う。
「ああ、もちろん売ってるよ」

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黒い腕 2018年4月21日


事故や事件が起きたところに必ず現れるという、厄災を招く『黒い腕』。ふとしたことからその噂を調べだした彼は最期、あることに気が付くが……。

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「ふぅ」
 僕は椅子にもたれかかり、腕を横に振り回して伸びをする。その拍子に数枚の資料が机から落ちるが、どうせ認知心理学や色彩心理学関連の必要のない資料だ、無視しても良いだろう。そんな性格だからか、机の周りには大量に紙屑が散らばっているのだが。
「一体何なんだ、この『黒い腕』っていうのは」
 机上のマウスを掴み、ディスプレイに表示されるオカルト掲示板のスレッドをスクロールしていく。ホラーを取り扱う掲示板の特徴ともいうべき、黒い背景、赤い文字、読みにくいおどろおどろしいフォント。たまに、黒との対比を試みたのか白い文字や毒々しい感じを出したいのか紫の文字を使っているサイトもあるが、どちらにせよ購買意欲をそいでしまう暗色というのはマーケティング向きではない。
 意外にも、人間というのは色に左右されるのだ。プロパガンダに赤と黒が使われる理由や癒しを謳うものに青や緑が使われる理由はそういうところにある。
 と、いくらか頭の中で愚痴ったところで、僕はスレッドに目を通す。
 タイトルは『★あなたが体験した怖い話★壱壱話目』みたいな感じの奴で、良くある奴と言えば良くある奴……というよりは、定期的に立つスレの一つだ。
 とはいえ、その中に書き込まれた『黒い腕』というレスが僕をこんな風に家に閉じ込めている。事の発端は友人が「おい、これ見てみろよ」と言って僕に見せてきたのがこのレスで、何故か分からないが内容に惹かれてしまった僕は今、持ち前の好奇心と研究欲をいかんなく発揮しているというわけだ。
 概略はこうだ。書き込んだ主はある事故現場──その事故はガソリンスタンドにタンクローリーが突っ込んで死者12人負傷者34名を出した事故で、僕もニュースで見て覚えていた──の生存者だ。
 ガソリンスタンド前の歩道を歩いていた彼(彼女かもしれない)曰く、タンクローリーがガソリンスタンドに突っ込む前に、反対側の歩道に植わっている街路樹から黒い腕のようなものがぬるりと出ており、それに手招きされたのだそうだ。もちろん見間違いじゃないかと目をこすっていて見直したそうだが、やはり腕が手招きしていたらしく、興味を惹かれた彼は走る車の確認すら忘れて道路を横切った。
 そして無事反対側の歩道に着いて街路樹の裏を確認しようとした瞬間、タンクローリーがガソリンスタンドに突っ込み、爆発炎上。彼も負傷者の一人となった。
 彼の見解では、その『黒い腕』は事故現場に現れて事件を招いているのではないか、ということだ。とはいえ、初めの頃は他人のレスも付かず半ばネットの海に沈んでいた。
 しかし、つい一か月前くらいのことだ。同じような『黒い腕』を見たという人が現れた。その人は家が火事になる前に、窓の外から家の塀から突き出た『黒い腕』が手招きしているのが見えて、だれかと思い外に出たら給湯器から出火──原因は漏電だそうだ──家が全焼した。
 それからほぼ毎日、同じように『黒い腕』を見たという人が現れてレスが続々とついていき、今では独立したスレッドが建っている。とはいえ、独立したスレッドの方はというと、見た人間と見ていない人間の──いわば信じる者対信じない者の構図だ──宗教戦争の体を成しており、あまり具体的な話はされていないのだが。
 僕はスレには参加せず、主に元のスレに書き込まれた内容から「まずはその事件が本当に起きていたのか?」ということを探した。具体的には、ローカル紙からネットニュースまで該当しそうな事件を調べては、その事件が起きたかどうかの裏付けを取っていったのだ。
 さらにはその宗教戦争のおかげで、「みたことがある」という人のIPアドレスが何のカバーもされずに書き込まれていた。実はIPアドレスを使うとプロキシサーバーを経由していたりスマートフォンで書き込んだりしていない限りは、書き込んだ主の居住エリア──日本であればどこの都道府県に住んでいるか──が分かる。そこから書き込んだ主が同一人物かの判断をしていった。とくにこういうBBSでは、同一人物が別人に成りすましてそういう噂を作ることもあるからだ。
 当然、百近くあるすべてのレスを裏付けすることは叶わなかったものの、大体八十三のレスは事実確認が済み、内本当に起こったと思われるのは十五個。さらにその過程で、同じように『黒い腕』を見たというブログやSNSの書き込みも見つけて裏付けを行い、一割くらいの記事が本当と考えられるというのが分かった。
 そういうわけで認知心理学の端っこ1ピクセルを噛んでいる僕は、『黒い腕』が集団ヒステリーやフォークロアによる幻覚、便乗したジョークとは考えにくいという結論に至り、その正体を暴こうといろいろ探っているというわけだ。
 とはいえ、『黒い腕』という形に限らないのであれば、ああいう「事件の前に起こる前兆」的な何かはいくつも見つかる。死者が出る前の家に黒い煙が入っていった、リンカーン暗殺を予兆するかのような写真のノイズがある……などなど、玉石混交ではあるが。僕の見立てでは、『黒い腕』もそういうものの一つなのだろう。
 基本的に、科学者というのは幽霊や超常現象、神、死後の世界を信じない人が多く──アラン・チューリングは無神論者でありながら死後の生を信じていたそうだが──『心霊現象イコール似非科学』という数式が出来上がっている人も居る。とはいえ脳科学者や心理学者の一部には、一般的な意味での幽霊ではないものの心理学的・神経学的な意味での幽霊を信じている人が居る。
 そして、僕はどちらかといえば後者寄りの人間だ。
 僕はすっかり冷めたインスタントコーヒーに口をつけ、苦みより酸味が先行するその味に辟易しながら、また資料を探り始めた。

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 いったい誰に話しているのか分からないまま、長々と僕が徹夜している経緯を語ったあの夜から一週間後。あれから結局、調査は全く進んでいない。というよりは、家に資料といえるような資料が無くなってしまった。
 というわけで、今の僕は認知心理学や社会心理学──今はそっちの方面で仮説を立てられないかということを考えている──の本を借りるために図書館に行った帰りだ。
「これでだめなら、次は脳科学や神経科学あたりを漁ってみるか」
 そんなことを呟きながら、ガラス越しに賑わっているのが見えるスーパーマーケットの前を歩いていると、ガラスに反射した景色の中に何か黒いものが見えた。
 僕が目を向ける。すると、向かいにある月極駐車場の看板から黒い腕が出て、僕に手招きをしていた。
 思わず借りた本が入っているカバンを取り落とす。
「うそだろ?」
 目をこすってもう一度。紛れもなく、黒い腕が手招きしていた。
 その腕は良くホラー映画で描かれるような、煙っているように輪郭のはっきりしない腕ではなかった。周りから浮いてしまうほど輪郭がはっきりしており、動きも人間そっくりでおそろしく滑らかだ。一番近いのは、人間の腕にタールをぶちまけるか黒いペンキを塗りたくったものだろう。
 しかし、看板の下から下半身が出ていない。どんなに細い人間でも、看板を支える二本の支柱に体を隠すことはできないはずだ。
 だから、もし見ている光景が事実ならば。若しくは、遺伝子改変されたか傷を治すためにヤモリの体液を注射したヤモリ人間の存在を否定するのであれば。
──腕だけが看板から出ている……。
 どう考えてもあり得ない。僕が幻覚を見ているということでしか説明がつかないが、幻覚を見るようなものは摂取していないし、睡眠時間だって十二分にとっているし、そういうものを起こす要因は何一つないと自負している。 
 その時、腕が看板の裏に引っ込む。と、同時に妙に甲高いエンジン音が後ろから聞こえてきた。
 後ろを振り向くと、かなり大きなトラックが僕に向かってくるのが見えた。運転席には陸に上がったカニのごとく泡を吹いたドライバーが見える。かなりの速度だ。法定速度は軽々超えているだろうから、今から慌てて逃げたところで弾き飛ばされるのは避けられない。
 そういえば、人間は死ぬ寸前に生存本能が活性化して、死をもたらす状況から逃れるために頭をフル回転させるそうだ。
 だからなのか、僕には『黒い腕』の正体が分かった。いや、『黒い腕が厄災を起こす』という噂の正体が分かった。
 認知バイアスだ。
 あの黒い腕は死や災害をもたらすものではない。その状況に遭遇したことや防げなかったことから精神を守るため、無意識に「あれは厄災の腕だ」と考えたのだ。そうすれば、自分で自分を責める必要はなくなる。生物として当然の行為だ、誰も責められるものではない。
 だが、あの黒い腕、本当は──。

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