スパークリングホラー
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[怖い話]第07話 念仏 2017年10月20日


これは社員のまめこさんの体験談…

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アパートで独り暮らしをしていた時のこと。
その日は年に1回なるかどうかの金縛りにあっていた。

怖いなと思いつつ早く寝たいと考えていたが
ふと天井の角に目をやると・・・
男の人がコウモリのような逆さの状態でしゃがみ込みこちらをじっと見ていた。

眠気も吹き飛び鳥肌がたち凍り付く。
どうしたらいいかもわからない。
とりあえず思いつく限りの念仏を頭の中で唱えた。

はやくいなくなれ!!

懇願していると
すっと自分の枕元の横に誰かが座った。

自分が産まれる前に亡くなった祖母だった。

写真でしか見たことがなかったがすぐにわかった。
祖母は横を向いたまま一緒に念仏を唱えてくれた。

何分経っただろうか。
数秒だったのかもしれない。

ばーちゃん初めて近くで見たなと思ったらすぅっと消えていった…

金縛りも解けて男の人も消えていた。

ばーちゃんありがとう。

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[怖い話]第07話 念仏 へのコメントはまだありません

[怖い話]第06話 お風呂 2017年10月15日


これは社員のまめこさんの体験談…

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数時間前の出来事だ。
私は長男とお風呂に入るのが日課だ。
遊ぶことに必死な長男にいつも
「鬼におへそとられるから湯船に浸かって隠しなさい」
と言っていった。
普段は何回いっても効果がないし風邪ひいたら明日お外で遊べないなど
色々追加してやっと浸かる。
しかし今日は体を洗って湯船に行くと自ら浸かった。
今日は浸かる気分なのかと呑気なことを考えていると
「鬼来ない鬼来ない鬼来ない鬼来ない・・・」
長男が言っている。
「おへそ隠してるから大丈夫だよ」
と言っても
「鬼来ない!」
と怒っている。
「鬼いるの?」
聞いてみると・・
「ちょちょにいる!(ここにいる!)」
と半泣きで扉の方を指さした。
その瞬間ぶわっと鳥肌がたった。

お風呂をあがる前にシャワーをかけるのが日課なのだが、
ザーッとかけていると
「めっ!めっ!鬼めっ!」
と急に長男が言った。
「鬼いない~」
どうやらシャワーの水が鬼に有効だったらしい。
長男が言うには男の方らしい。
通りすがりだったのだろうか。

p.s.
お風呂覗きが趣味の幽霊とかいるんだろうか…
そしてシャワーが有効だってのは良い情報だφ(゜ρ゜)

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[怖い話]第06話 お風呂 へのコメントはまだありません

[怖い話]第05話 廊下を歩く人 2017年10月8日


これはぐおじあと祖父の体験談…
※記憶が曖昧な部分は多少創作が入ってます

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祖父は病気をして仕事を引退してからは居間でテレビを見るのが日課だった。

ある時風邪を引いたぐおじあが学校を早退してきた。
祖父は足腰が弱く、二階に上がるのが大変なためぐおじあを居間で寝かせていた。

祖父が用事で席を外していると、
風邪で朦朧としているぐおじあの耳に足音が聞こえて来た。

トットットット

足腰の弱っている祖父は摺り足で歩いていたのでこんな軽快な足音は出せない…

トットットット

足音は廊下を行ったり来たりしていた…

しばらくして祖父が戻った時にぐおじあは祖父に尋ねてみた。

「誰かの足音してるけど誰か居たの?」

祖父はそれを聞くと事も無げにサラッと返した

「俺が一人の時もいつも誰か歩いてるんだ」

結局誰が歩いているかは分からなかった…

p.s.

もしかしたらひとつ前の話と何か関連があるかもしれないと思った事があります。
[怖い話]第04話 空き部屋の住人

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[怖い話]第05話 廊下を歩く人 へのコメントはまだありません

2017年9月30日


子どもたちから怖い話をねだられ、私は出身地で語られる伝説を話し始める。だが、その話には真実が隠れていた──。

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 ある日、私が散歩の途中に寄った公園の東屋で休憩していると、近所の子供たちが4人ほど寄ってきた。
 最近の子はゲームばかりなどというが、ここらでは遊び場があるおかげか、未だ外で遊ぶ子供たちを見る。かくいう私も、このように出歩いて体が鈍らないようにしているのだけれど。
 とはいえ、もう年も取って体も動かない。昔みたいに動ければいい、そう思ったことは何度もある。
 私は笑いながら、「どうしたんだい」と彼らに聞く。
「おばあさん、怖い話してくれない?」
 一人の男の子が、唐突に私に言う。近所ではカッちゃんだったか、そう呼ばれていたはずの子だ。ガキ大将とまではいかないけれど、子供たちをまとめ上げている子だ。
「またいきなりだねぇ。いいよ、とっておきのを話そう」
 そういうと、子供たちは喜んで、その場に座る。私は手振り身振りをしながら、子供たちに話し始めた。
 子供は元気な方がいい……元気すぎてもいけないけどねえ。
「これはね、私の出身地の、瀬戸内海のある島で起きた話なんだ──」
 
 月のない夜。ある島の砂浜で、男二人が小さなボートの側で話し込んでいた。男たちの顔は分からないが、一人はかなり背が高く瘦せ型。もう一人は対照的に小さく太っていた。
 この島は『禁断の地』と呼ばれている。男子禁制の島で、その理由は漁師に殺された大蛇を鎮めるためだとか男嫌いの海の神様が祭られているだとか諸説ある。
 しかし地元では、ともかく「男は入ってはならない」といわれつづけている。
 なぜなら入った男は、あるものは首と胴が離れた状態で、あるものは達磨──四肢が切り取られた状態──になってこの島の岩場に打ち上げられていることなどがたびたびあったからだ。これは地元の資料館曰く、そういうことがあったという最古の記録は江戸時代らしい。それもその男は「そんな噂はない」と言って死体で見つかったそうだから、もっと前から噂はあったのだろう。
 ただ、そういう場所には得てして、肝試し目的で入り込む人間がいる。果たして、この男たちもそのようだ。
「おい、こんなところで本当に面白いもんが見れるのか?」
「俺の目を信じろって」
「8と6を見間違えて、単位を落とすようなお前の目を?」
 そういって、痩せた男が笑う。言われた方はムッとして、「いいぜ、俺だけで楽しむから」と啖呵を切った。
「おいおい、そんなこと言うなよ。で、サトー。本当なのか?」
 男の一人がムッとしたままの、サトーと呼ばれた小太りの男を小突く。それで気持ちがほぐれたのか、サトーは「あぁ、もちろんだ。美女があの反対側の岩場で裸踊りしてたのを、俺はバッチリ見たんだ」と言った。
「どんな女だよ?」
「そりゃあ、白い肌で、出るところは出て、引き締まってるところは引き締まってる女だよ……顔は見えなかったけどよ」
 サトーはしりすぼみになりながら、そういった。
「嘘だったら、パクったボート返すのお前だからな」
「ジャンケンって言ったじゃねえか!」
 もう一人の男は「冗談だ、ジョーダン」と言ってケラケラと笑う。サトーはそれを見て、胸をなでおろしていた。そして「行こうぜ、モリ」といい、それに応じたモリとサトーは二人して、島の反対側にある岩場にのんびりと歩いていった。

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 今日は月夜で、満月の光に照らされた岩場は波で濡れ、ぬらぬらと光っていた。
「滑るから気をつけろよ」
「おう」
 いくら月夜で明るいとはいえ、夜の海は危ない。少しでも足を踏み外せば、へばりついた海藻のせいで滑りやすい岩から足を踏み外し、頭を打って怪我をする。下手すると、岩についているフジツボや貝で体を切ることだってある。
 だが、彼らは慎重に足を運んで、転ばないように気を付けているようだ。それにどうも、彼らはアウトドア用の長靴を履いているらしく、足取りはおぼつかないものの滑らずに岩場を歩いている。
「本当にこの岩場か?」
 モリがサトーに声をかける。サトーは自信満々に「間違いないって!」と答える。
「俺が見たときも、こんな感じの満月だったんだよ」
「ふーん」
 サトーは見たときの状況を、砂場に押し寄せる波のように、切れ間なくモリに話していた。それにモリは相槌を打ちながら、岩場の先へと進んでいく。
 岩場の先についた彼らは足を止めた。そこは岩場の中で唯一滑らかで平らな岩の上だった。少し進めば、もう海の中だ。
「ここで見たんだよな? それもはだしで?」
「ああ……」
 モリの問いに、サトーは自信なく呟いた。どうみても、こんなところに人が来ているとは考えにくいからだ。
 そこは、今のような干潮なら足を波に洗われる程度で問題ないが、満潮になれば簡単に沈んでしまう。それに、いくら平らとはいえ周りはごつごつとした岩が出ており、裸足で歩けば怪我をするのは避けられない。また、ぬめる海藻が岩に張り付いており、ここで踊るなんて激しい運動をすれば、容易に転ぶ。
「お前の見間違いなんじゃないか?」
「かもしれねえ……こんなところに女がいるなんて、考えられねえもん」
 モリが海の方を見ながら舌打ちして、「ちっ、骨折り損かよ。帰ろうぜ」と言った。それに「だな」とサトーが返す。
 その時、空気を切る音が響き、モリの隣にあったサトーの頭が無くなった。猛烈な勢いで噴き出す血液に、モリは「え?」という素っ頓狂な声で答え、思わず後ずさる。その時、彼は足を滑らせて強か石に体を打ち付けた。
 その時、モリはその女と目が合った。
 腰に付けたベルト以外は裸の女。プロポーションは最高だろうが、顔はおしろいで白く塗られ、怨嗟の形相を浮かべて、彼をにらんでいた。その女が手に大きな鉈をもって、モリを見下している。
 女はモリの胸を踏みつける。情けない声が漏れたが、女はそのまま鉈を左脇にあてがって、上へと切り裂く。地面が割れるような悲鳴も意に介さず、女は同じように右腕を切り落とした。
 悲鳴は次第に薄れ、荒々しい呼吸が聞こえ始める。譫言の様に「はすけへ……」という声が聞こえるが、女は足を離して腰につるした水筒を開け、モリに中の塩水を浴びせかけながら、呪文を唱える。
 モリの体が何度かビクッと痙攣してから、長い息を吐いて彼の目から光が消えた。
 女は遺体を祭壇に横たえ、また呪文を唱える。そして、満潮になるまで、神に向かって踊り続けた。

「──ってお話があるんだよ。女の人は妖怪かお化けなんだろうねえ、怖いねえ」
 余韻を残すように、私は言った。どうも、この話は子供たちの心をつかんだようで、彼らは身を乗り出すように話を聞きながらも、固まっていた。
 その時、コウちゃんと呼ばれている子が、「なんで登場人物が全員死んでいるのに、おばあさんは知ってるの? 作り話なんじゃないの?」と聞いてきた。
 確かに見た人がいないと、怪談話は伝わらない。
「そうかもしれないねえ……私も地元にいたときに聞いただけだからね。でも、私の地元で伝わる話なんだ」
 コウちゃんの質問は、周りの子たちの緊張を解いたようだった。口々に「作り話か」という声が聞こえ、子どもたちは胸をなでおろす。ざわめき始めて少しすると、カッちゃんが「ありがとう、おばあさん」と言って、子供たちは別の遊びに向かっていった。
「やれやれ、忙しいねえ……元気なのは良いことだけど」
 私は子どもたちの背中を見ながら、あの当時のことを思い出していた。確かに、作り話のように聞こえるだろう。まあ、今の世の中であんな風習を続けている島があるなんてこと、そう信じられるものではない。
 だが、私が真実をすべて語ったというわけではないということに、彼らはいつ気づくのだろうか。願わくば、あの島に関わること以外で思い出してほしい。できれば、いつまでも気づかないでいてくれると嬉しい。
 本当のことを知ったら、子供たちは私に話しかけてなんか来なくなっちゃうからねえ……。

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陰 へのコメントはまだありません

[怖い話]第04話 空き部屋の住人 2017年9月17日


これはとある兄弟から聞いたお話…
※記憶が曖昧な部分は多少創作が入ってます

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兄弟は長男 > 次男 > 長女の三人兄弟。
子供が大きくなったタイミングで長男と次男の部屋が増築された。
※長女は子供部屋をそのまま引き継ぎ
※増築された部屋は2階、1階は車庫

こんな感じ↓
        長男
  廊下廊下廊下廊下
両親廊下長女  次男

長男は高校卒業と同時に進学の為に家を出た。
長男の部屋は空き部屋となった。
その少し後からこの家では怪現象が発生する。

夜中の2時頃になると誰かが廊下を歩いて来る足音がする。
足音はそのまま長男の部屋に入りドアをパタンと閉める。
次男は不思議に思い長男の部屋のドアを開けるが誰も居ない。

とある日次男が夜更かししているとまた足音が聞こえて来た…
今日は部屋に入る前に見てやろうと。自分の部屋のドアの前にスタンバイ。
ペタペタという裸足の足音が近付きドアの前に来た瞬間!

「バーン!」

とドアを勢い良く開けて兄の部屋のドアを見た

何も居なかった…
しばらく待ってみたが何も起こらなかったので次男は諦めて寝る事にした。

[翌日]

長女「兄ちゃん昨日足音が来たときドア開けたでしょ?」

次男「あれ?あれお前にも聞こえてたんだ?」

長女「兄ちゃんがドア開けた時に部屋に上半身しかない女が
   私の部屋に入って来てそのまま窓から抜けていったんだよ」

長女の話からすると、
次男がドアを開けた瞬間に女は長女の部屋を通過し、
窓から次男の部屋方向に抜けていった事になる。

こんな感じ↓
        長男
  廊下廊下廊下廊下
両親廊下長女→女→次男

あれ以来、長男の部屋に向かう足音はしなくなった。
もしかしたらどこかに行ったか。
次男の部屋に居着いたのかもしれない…

この話がなぜこんなに詳細に書かれているかと言うと、
この話の次男はぐおじあだからである_ノ乙(、ン、)_

P.S.
これ書いてる時にずっと耳鳴りと鳥肌が立って怖かったなぁ(((;゚д゚)))

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[怖い話]第04話 空き部屋の住人 への1件のコメント

[怖い話]第03話 サっちゃん 2017年9月16日


これはぐおじあの知り合いのS君から聞いたお話…
※記憶が曖昧な部分は多少創作が入ってます

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小学生の時にS君はとあるキャンプ場にキャンプをしに行った。
地域のイベントだったので友達と一緒にテントを建ててカレーを作ってと
とても楽しい時を過ごした。

夕飯の後、よくある流れで怪談が始まった。
その中で印象的だったのが童謡の「サっちゃん」のお話。
内容としては何故サっちゃんがバナナを半分しか食べられなかったかを
怖い話に改変した良くある「この話を聞いた人は…」のパターンのお話だった。

S君は寝てる時にサっちゃんが来るかもしれないと酷く怖がり、
親たちに漏らすといけないからとトイレに行くように促された。

キャンプ場のトイレはテントから離れていたため、
S君は嫌がる友達を無理矢理誘ってトイレに向かった。

トイレに向かっている途中に、木製のウッドテーブルが何個か置いてあるエリアを通り過ぎた。
その中の一つのイスに無表情の中年女性が座っていた。
夏だというのにカーディガンを羽織り、視線は遠くを見ていた。
S君は不気味に感じたが友達は何も見えないかのように横をすり抜けて行った。
恐る恐るS君もテーブルの脇を通り抜けたが、女性は微動だにしなかった。

トイレを済ませて戻るとテーブルに女性の姿は無く、
一着の白いカーディガンだけがイスに掛かっていた。

S君はサっちゃんの事などすっかり忘れられたが、
替わりにその中年女性の顔が頭にこびり付いて離れず結局眠れなかった。

おまけ

[サっちゃん]

サっちゃんがなぜバナナを半分しか食べられなかったか知ってる?
それはね…バナナを半分食べた時に車に轢かれて死んじゃったからなんだよ。
轢かれたときにサっちゃんの片足が無くなってまだ見つかってないの。

この話を聞いた人には夜中にサっちゃんが訪ねてくるの。
無くなった足を探しにね…
この時枕元に半分のバナナを置いておかないとね、
バナナの代わりに足を持って行っちゃうんだって!

(補足)
この話を聞いたぐおじあはワクワクしながら使い捨てカメラを持って待機しましたが、
サっちゃんは現れませんでした_ノ乙(、ン、)_

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[怖い話]第03話 サっちゃん へのコメントはまだありません

[怖い話]第02話 階段を登る足音 2017年9月5日


これはぐおじあの知り合いの看護師から聞いたお話…
※記憶が曖昧な部分は多少創作が入ってます

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看護師のMさんは夜勤をしていた。

相方の看護師と交代の時間になりMさんは仮眠をするために仮眠室に入った。
丁度寝入りそうになった時、

カツ!カツ!カツ!

と、仮眠室の横の階段を上る音が聞こえた。
ふとMさんはある事に気が付いた。

仮眠室は病棟とは別棟となっており、
今はMさんしかいない筈であった…

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[怖い話]第01話 デートスポット 2017年8月24日


これはぐおじあの中学の先輩から聞いたお話…
※記憶が曖昧な部分は多少創作が入ってます

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中学生だった先輩は地元で有名なデートスポットのキャンプ場に一人で来ていた。
彼は先人達のお手本から学ぶ為に駐車場近くの廃屋に身を潜めていたのである。

期待に胸を躍らせながら駐車場に止まっている車を双眼鏡で眺めていると、
ふと後ろに気配は感じた…

恐る恐る後ろを振り返ると髪の長い女が立っていた。

「ひっ!!」

突然の出来事に動けずに居ると女はふっと消えた…

先輩は一目散に逃げだしたという。

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[怖い話]第01話 デートスポット へのコメントはまだありません

【R-15】遭難 2017年8月23日


猛吹雪の中、遭難した3人は山小屋に避難する。しかし、食料のない中、彼等は禁忌を犯すことに決めるが……。

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食人表現があります。読む際はご注意ください。

 隙間風が吹き込む。ビョオ、ビョオという音が、そこら中から聞こえてくる。
 心もとない明りが風にあおられ、ゆらゆらと揺れる。光が映し出す僕らの影は、まるで踊るかのように蠢いていた。
 僕はすこしでも体温が逃げないようにと、シュラフ(寝袋)に包まれた自分の体を抱き寄せる。
「おい、スティーブ」
 シュラフにくるまれたままのリーダーが僕に声をかけ、イモムシのように近くにすり寄ってくる。そして、体同士を寄せ合って、残り少ない体温を布越しに分け合った。
「どうしました、クリス」
「アーロンの様子は?」
 僕は目を床に落とす。そこには顔面蒼白の仲間が横たわっていた。
 彼は登っている時に滑落し、開放骨折を負った。とりあえずの応急処置はしたものの、リーダーの判断で下山することに決めたのだ。
 そう、僕らは登山をしていたんだ。僕ら3人は元々大学の登山部で一緒だった。そして、社会人になってからも時間を見つけては会っていた。
 ある時、学生時代は悪天候で走破できなかった山脈を走破しようという話になったのだった。というわけで僕らは装備を持って冬山登山に挑んだのだが、中盤まで来た頃にアーロンが滑落、彼が持っていた食料や水は運悪く、全て谷底に落ちてしまった。
 リーダーはすぐさま山岳救助隊に連絡を取ったのだけど、悪天候とヘリの故障のせいで一週間は活動できないと言われた。それで、自力での下山に挑んだのだが、天候の悪化が著しくて、僕らは近くにあったこの山小屋に避難したのだった。
 そこまでは良かった。食料こそないものの、水は雪を解かせば手に入る。寒さは何とかしのげるし、場所は伝えてあるから一週間耐えれば救助が来る。
 ただ、開放骨折は感染症を起こす。それが低体温・低栄養状態では免疫力低下をおこし、なおの事、悪化する。
 アーロンも例外ではなかった。
 何度あるかはわからないけれど高熱を出しているし、何も話さず獣のような息遣いだ。これでは下手すると、敗血症性ショックを起こすかもしれない。少なくとも、すぐに病院へ運ばないと死んでしまうだろう。
「厳しいですね……治療なしだと、あと数日持つかどうか……」
「そうか……救急キットに、治療できるようなものはないんだよな……」
「ええ」僕は首をかすかに振った。「覚悟しておかないと」
 不意に眠気に襲われ、僕はそのままリーダーに寄り掛かって、目をつぶった。

 目を覚ますと、僕は床に寝かされていた。リーダーが僕の方に目を向け、カップに入った雪解け水を手渡してくれた。
「飲んでおいた方がいい。温かいから」
「ありがとうございます」
 僕はカップの中の、味もない水を一口飲む。体中に広がり、凍り付いた体を解かすような温かさが僕を包み込む。
 すると、リーダーが僕の前に来て、首を振った。
「アーロンが死んだ。遺体は取りあえず、シュラフに包んである」
 先ほどの温かさは波が引くように無くなっていき、代わりにとてつもない無力感に襲われる。
 友人を助けることができなかった。難しいことだっていうのはわかっていたけれど、それでも救うことができなかった。他に何かできたかもしれない、なにか別の方法で助けることができたかもしれないのに。
 アーロンの親になんといえばいいのだろう。僕の腕が足りずに死んだと正直に言うべきだろうか、僕らのプランが不味くてアーロンを殺してしまったと、伝えなくてはならないのだろうか。
 それに、彼には妻がいる。あの人になんて伝えればいい、あの人はぬけぬけと生き残った僕らのことを聞いて、なんて思うだろうか。
 そう思うと、僕は何とも居た堪れない気持ちになって、目から涙が零れ落ち、頬を濡らした。涙はすぐに凍り、僕の頬に線を描いた。
「そう……でしたか……」
 リーダーは気丈にも「ああ。救助が来るまで、あと6日くらいだ。それまで、アーロンのためにも生きよう」と言って、励ましてくれる。
 僕は頷いて、リーダーと一緒にまた身を寄せ合った。

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 それから三日ほどだろうか、それくらいの時間がたったころ。
 僕ら二人は強烈な飢えから動くこともなく、ただただ横になっていた。腹の虫が鳴くこともなくなり、僕らが唯一動くと言ったら、水を得るために雪を掬いに行くときくらいだった。
「いま、何日目だ」
「わかりません。もう、数えてませんから」
 最近やることと言えば、僕ら二人はたまに声をかけ合い、死んでいないかどうかの確認をするだけだ。
 僕は寝返りをうつ。目の前に、穴だらけ隙間だらけの山小屋の壁がそびえ立つ。
 アーロンが食料さえ落とさなければ、こうはならなかった。それに、あいつから漂うかすかな腐臭が胃をもぞもぞと蠢かせる。
 そういえば、肉は腐りかけがおいしいんだったっけ。そうそう、熟成肉というのもあるらしいし、新鮮な肉よりも腐った肉のほうがおいしいと聞いたことがある。
 僕は残り少ない力を振り絞り、その考えを振り払った。
 だめだ、何を考えている。友人を食うなんて、そんなことを考えちゃいけない。
 でも、その考えはとても魅力的に見えた。飢えている時なら、どんなものだっておいしいと言うじゃないか。空腹は最高のスパイスだとも、言うじゃないか。
 いやいや、そこまで堕ちれば、人としての尊厳がなくなってしまう。
 尊厳がなんだ、威厳がなんだ。飢えの前に、権力なんて意味はないんだ。
「ねえ、クリス」
 僕は壁を見たまま、リーダーに話しかける。リーダーは短い沈黙の後、口を開いた。
「……お前も、同じようなこと、考えてたのか?」
「ええ……焼けば、菌は死にますから。バーナーはありますし、調理器具だって何とかなりますし……」
 長い沈黙。その一秒が過ぎるたび、僕の飢えは酷くなっていった。早くリーダーが決断してくれないだろうか。
「それしか、ないか」
 その言葉を聞いた僕の心は、どこにこんなエネルギーが残っていたのかというほど、狂喜乱舞した。これで、このきつく苦しい、極寒の冬の化身である飢えから解放される。そのことが、僕を奮い立たせた。

 それからの二人は早かった。
 持っていたナイフで皮をはいだり切り取ったりと、動物を解体するようにバラバラにし、フライパンを熱してスライスした肉をこんがりと焼く。
 それを僕ら二人は貪り食う。それが終わると、サイコロ上に切った肉を雪と一緒に煮て、そのスープを飲み込んだ。
 肉は血抜きもまともにしなかったからか恐ろしく獣臭かったものの、とても柔らかくて、人の肉というよりは小鹿のような肉だった。人の肉が固いとか筋張っているとかいったやつは、きっと人の肉を食ったことがないに違いない。
 ある程度食べて飲み、落ち着いたころ。僕はこれまでにない多幸感に満ち満ちていた。食事がこんなに素晴らしいものだったなんて、都会での生活ではわかり得ないことだろう。
 少しして、僕は言いようもない不安と罪悪感にさいなまれ始めた。
 ついに、僕らは自分のためとはいえ、他人を貪り食うという禁忌を犯した。それがどんな目で見られることか、理解できないほど馬鹿じゃない。
 だが、食べなければ、僕らは間違いなく死んでいた。それに、僕らが飢える理由を作ったのも遭難する理由を作ったのも、彼じゃないか。
 それだけじゃない、彼は死んでいた。僕らが食べている動物たちだって、死んだ動物たちじゃないか。何が違うというんだ、死んだ人間を食べるのと死んだ家畜を食べることとの違いはなんだ、どっちも動物じゃないか。
 僕らは生きるために食べているんだ。なぜ、人間を食べちゃいけないんだ。
 そうだ、僕らを冷ややかな目で見る人間たちだって、同じ状況になれば同じことをするに違いない。彼等は口でいくらでも綺麗事を言うけど、それを支えているのは薄っぺらいプライドや習慣化した本能じゃないか。
 それだけじゃない、魚やウサギも共食いするんだ。動物である人間が、共食いをしちゃいけないなんて理由はないじゃないか。
 僕はため息をついた。獣のにおいが胃から這い上がってくる。
 そうだ、僕らは悪くない。これが自然界では普通なんだ。弱った個体や死んだ個体を食べる、それが普通なんだ。
 やっと落ち着いた僕は満腹感と頭を久しぶりに使った疲れから、また眠りに落ちた。

 それから毎日、ちびちびと肉を切っては食べを繰り返し、なんとか生き永らえた僕ら二人は、外から響いてくるヘリの音で目が覚めた。
 リーダーと視線を交わす。僕はシュラフから這い出て、外に出た。
 一週間ぶりの日光が僕の網膜を焼く。その痛みは、僕が生きていることを実感させてくれた。
 遠くに赤と白のカラーリングをしたヘリが見える。
 僕とリーダーは手にしたウィンドブレーカーを、ヘリが近くに着陸するまで大きく振り続けた。

 ヘリの中で僕らは毛布に包まれ、ペットボトルの水や簡易食糧を貰って飲んでいると、レスキュー隊員が近くに来た。
「すいません、あなた方は三人でここに来たんですよね?」
 僕はぎくりとして、リーダーの方に目を向ける。リーダーが言いにくそうに「ええ。でも……一人が死んで、生き延びるためにその遺体を少しずつ食べたんです」と、僕の代わりに答える。
──ああ、これでどんな目で見られるか……。
 すると、レスキュー隊員が怪訝な顔をして、首を傾げた。
「あの……中にあるの、足を骨折してる小鹿の死体なんですけど」
「は?」
 僕ら二人は素っ頓狂な声を上げる。訳が分からない。僕らが食べていたのはアーロンの遺体だったはずだ。
 レスキュー隊員が面倒そうに顔をしかめた。
「だから、死後何日経った小鹿ですよ。それが、綺麗に解体されて、おいてあるんです。人なんか、どこ探してもいませんでしたよ」
 僕ら二人は顔を見合わせる。その時、ヘリの無線から『登山者から遺体発見の連絡。そちらの現在地から数キロも離れていない谷底だ。引き上げることは可能か?』という連絡が聞こえる。
 数キロの地点にある谷底……アーロンが滑落した谷底じゃないか!
 それでやっと、僕はわかった。
 笑いが腹の底からこみあげてくる。まるで、おとぎ話か何かじゃないか。そして、それに必死に弁明しようとするなんて。
 そういえば、極限状態では人間は幻覚を見るんだった。
 リーダーの方に目を向けると、リーダーも笑っていた。笑いが止まらない、こんなひどいことがあるだろうか? 僕ら二人はとんでもない馬鹿のエゴイストだ。そして、弁明する必要もないことに、なぜ必死になって弁明する必要があったんだろう!
 その無意味さに、追い詰められた人間の狂気に、僕らは笑いが止まらなくなってしまった。こんなことがあるなんて!
 あきれ返った顔のレスキュー隊員がヘリに乗り込み、ドアを閉める。僕ら二人の笑い声は、上昇するヘリのローター音にかき消された。

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【R-15】遭難 へのコメントはまだありません

ループ 2017年8月18日


 見えないものが見えるようになった彼。それに恐怖し、彼はカウンセラーのもとへ相談に行くが……。

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 僕は最近見た映画に出てきた俳優に似ている初老のカウンセラーと、椅子に座って向かい合っていた。正確には、僕はソファに座っていたのだけれど。
「今日はどうされましたか?」
 カウンセラーが僕に問いかける。僕は意を決して、今まで体験したことを話すために口を開いた。
「変なものが……幻覚っていうんですか、そういうのが見えるんです」
「どのような幻覚ですか?」
「例えば、前を歩いていたはずの男性がいきなり消えてしまったり、首だけが空をふわふわと浮いていたり……おかしいですよね」
 カウンセラーはノートに筆を走らせる。
「その男性や首は、どのような姿ですか? 親戚の叔父さんやずいぶんあっていない祖父、若しくは亡くなってしまった曽祖父だとか」
 その質問に僕はびっくりした。親に言えば、「お祓いでも行ったら」と言われて蔑ろにされ、友人に言えば、「おかしいやつだ」と言われて距離を取られたというのに。
「あなたは私のことを疑わないんですか? こんな、変なことを言っているのに」
 彼はペンを置いて、首をかしげる。
「そうですね、少なくとも貴方には見えているが、私には見えていない。ということは、貴方の心の中にそのような何かがある、ということです。そして、私の仕事はそれと向き合えるように、貴方をサポートすることですから」
「そうでしたか……」僕は口にたまったつばを飲み込んだ。その言葉に救われたような気がした。「いえ、見たことのない人ばかりです」
 彼は頷き、何かを書きつける。
「では、最近読んだ小説や映画に、そのような登場人物が出てきたということはありませんか?」
 僕は首を振る。
「いえ、ありません。僕は洋画と洋書が好きですけど、出てくる幻覚はみんな日本人みたいな顔をしてますから」
「いつごろから見え始めましたか?」
「そうですね、つい最近まで一人暮らししてたんですけど、親から『帰ってこい』と言われたので、実家に帰ってきたあたりからですね」
 彼は首を傾げ、僕が一番して欲しくない質問をした。
「ご両親とは仲がいいですか?」
 僕は口をつぐむ。実は、親との仲は良くない。
 周りのみんなから「親と仲良くしないのは親不孝者」と言われ続けてきたけれど、どうやっても親と仲良くできなかった。子供のことはいつも成績のことで叱られてきたし、大学では「学費が高い」と常々言われ続けてきた。働き始めてからも、「金が足りない」と言われてきたから、給料の一部をいつも仕送りしてきた。
 それだけじゃない、もっとある。でも、思い出したくない。
「いえ……あまり」
 彼は頷き、またノートに書きこんだ。
「そうでしたか。家族構成をお聞きしても?」
「ええっと、母と父、あとは兄がいます。でも、高校生の頃に兄はどこかに行ったっきり、連絡が取れなくなってしまって」
「その時、貴方は何か思いましたか? 例えば、寂しいとか」
「いえ……兄との仲は良くなかったので、あまりそうは思いませんでした。むしろ、清々したというか、そんな感じです。でも、それから母と父は仲がもっと悪くなって……」僕は嫌な思い出を振り切るように、首を振った。「それからすぐ、僕は地方の私立大学に行って一人暮らしを始めたんです」
 彼は納得したように頷く。
「話は変わりますが、幻覚の中の『彼ら』は貴方に話しかけてくることがあるのでしょうか?」
「えっと、『君は悪くない』だとか『親がよくなかったんだ』だとか『ゆっくり生きるんだよ』だとか……ポジティブのことばかり、言ってくれるんです。でも、僕が目をそらすと、『彼ら』は居なくなってしまうんです」
「なるほど。子供のころに、そのような存在がいたことはありませんか? つらいときに励ましてくれるような存在です」
「いえ、いませんでした。友達もあんまり多くなかったですし、先生からも距離を取られていましたので」
「分かりました」彼はペンを置いた。「貴方はもしかしたら、虐待を受けていたのかもしれませんね」
 そう言われ、僕は驚いた。そんなこと、思ったこともないからだ。
「えっ?」
「この場合は心理的虐待というべきでしょう……常に叱られ、親同士の喧嘩を見せつけられる。それによって、貴方は自尊心を傷つけられながら、極度なストレスに晒されたのです」
 彼は座る姿勢を変え、僕を見据えた。
「ですから、そのような状況を改善できるようにしていきましょう。それで、きっと貴方にしか見えない『彼ら』は、また居なくなってしまうと思います」
 そんな希望に満ちた言葉を言われたことなんてない。僕は思わず、頭を下げた。
「ありがとうございます」久しぶりに笑ったせいで、ちょっとぎこちない笑顔になった。「治るかもしれないんですね」
「ええ、また来週、ここに来てください。もうすこし、いろいろ聞いてみないといけないことがありますので」
 僕は立ち上がって、改めて頭を下げた。
「もちろんです。ありがとうございました」
 彼もにっこりと笑う。僕も彼に笑い返した。

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「──で、患者の様子は?」
 私は看護師とともに、モニターを眺めていた。それは部屋につけられたカメラから、画像をリアルタイムで送ってくる。
 ここの精神病棟では、このように患者と医者が必要以上に触れないように配慮されている。というのも、ここに来る患者のほとんどに自閉傾向がみられ、自分の世界を壊されるのを嫌がるからだ。
 それに、医者側や看護師側も怪我するようなリスクが減る。尤も、彼は攻撃性がほとんどないどころか、調子のいいときは社交的なのだが。
「改善の様子はありませんね。彼、なんでしたっけ」
「妄想型統合失調症だ。投薬は続けているのか?」
「とりあえずは。ですが、目立った効果はありません」
 彼がモニターを指さす。
「面会用の椅子を自分の前に設置し、ベッドに座りながら、居もしないカウンセラーといつも話し続けています。で、話疲れたらそのままベッドに横になって、目が覚めたらまたカウンセラーと話しています」
 私はため息をついた。妄想型統合失調症は投薬の効果が出やすいはずなのに、彼は慢性化してしまった。唯一、暴れることがないのが幸いか。
「食事はしっかり出しているのか?」
「ええ。食べているときはまともというか……私も食べているときに彼と話をするんですが、とても思索的で知的です。よく、映画の話とかするんですけど」
 きっと、それが本当の彼だろう。だが、妄想型統合失調症を患った人格が、その彼を押さえつけてしまっている。
「食べているときはまともか……。解離性障害のせいだな」
「彼、治るんですかね?」
 看護師が問う。私は「わからん」と言って首を振った。
「どうして、ここに来たんでしたっけ?」
「他人の家に入り込んで、ここと同じことをやった。で、通報されて警察が来たんだが、この通りだから責任能力がないとみなされ、ここに来たんだ。まあ、椅子の配置が変わっていたくらいで、家もほとんど荒らされてなかったらしい」
「そうでしたか……」
 私はまたモニターを見る。彼は、椅子に向かって話し始めていた。
──彼は常に日常をループしている。彼の日常は、ここにしかないということか。
 声がスピーカーから流れる。私と看護師は、別の患者を診るために部屋を後にしようとドアに向かう。
『変なものが……幻覚っていうんですか、そういうのが見えるんです』
『例えば、前を歩いていたはずの男性がいきなり消えてしまったり、首だけが空をふわふわと浮いていたり……おかしいですよね』
『あなたは私のことを疑わないんですか? こんな、変なことを言っているのに』
 ドアを閉めるまで、彼の言葉は空虚な部屋に響き続け、部屋の中を巡り回っていた。

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